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【第1部】 第15話 夜の学校……二人きり①

last update Last Updated: 2025-06-27 17:01:54

 肝試しといっても、何か仕掛けが用意されているわけではなく、学校の中を探索してくるだけのようだ。

 この企画を考えた人は、ただ暗がりで男女二人きりになるというシチュエーションが欲しかったのだろうか。

 まあ非日常ではあるから、吊り橋効果的なものも手伝って二人の距離が縮むと思われているのかもしれない。

 スタートからゴールまでの道順は決められており、先ほど地図を渡された。

 理科室や音楽室など、学校の恐い場所の定番を巡っていくツアーのようだ。

 矢印で進むルートが示されている……この通りに進めばいいらしい。

 それにしても……と、私は隣を歩くヘンリーへ視線を向ける。

 先ほどからずっと何も話さない。

 暗闇に恐怖を覚えつつ、私は横目でヘンリーの様子を観察していた。

 窓から射しこむ月明かりがヘンリーを照らしている。

 彼の綺麗な金色の髪が輝き、色白の肌がさらに白さを増して見えた。

 いつもよりミステリアスな雰囲気に、なんだかドキドキしてしまう。

 あの二度目のキス……。

 あれから私はヘンリーを意識するようになり、避けてしまうようになった。

 ヘンリーもそんな私の態度に遠慮しているのか、あまり話しかけてこない。今ではほとんど話さない状態が続いている。

 このままの状態が続くのは嫌だ。

 ヘンリーと出会ってからいろいろ大変なこともあったけど、彼と過ごす時間は私にとっていつの間にか大切なものになっていた。

 ヘンリーと一緒にいると、心が満たされていく。

 ずっと一緒にいられることが嬉しくて、傍にいるとほっとしたり楽しかったり。

 出会って間もない彼にこんな感情持つなんて、私自身驚いていた。

 そして一番驚いたことは、触れ合っても嫌じゃないこと。

 体に触れたり、手を繋いだり、ちっとも嫌悪感を感じないのだ。一度目のキスも、二度目も、驚いたけれど嫌じゃなかった。

 今まで男性にそんなことされたことがないから、比べようがないけれど。

 これって特別なんじゃない
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Comments (1)
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憮然野郎
流華の中にあるもう一つの感情、気になりますね...
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